チャップリンの独裁者

The Great Dictator  (1940) USA 2hr 05min.


世界制服を夢見るトメニアの独裁者アデノイド・ヒンケル、そしてヒンケルと瓜二つのユダヤ人の床屋、チャップリンが二役を演じるナチ・ドイツへの風刺がたっぷりの作品。

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第一次大戦末期の1918年、トメニア国のユダヤ人一兵卒チャーリーは敵地から将校シュルツと一緒に脱出したが、乗っていた飛行機の事故で記憶喪失になってしまい入院する。 その間にトメニアでは、ヒンケルが勢力を広げていた。世界制服に向けてトメニア国民を煽り、ユダヤ人に迫害を加えていたのだ。 記憶が戻った床屋はゲットー(ユダヤ人街)にある自分の店に戻ったがユダヤ人が迫害されていることなど知らずトメニア軍の親衛隊の暴力的な行動に反抗的な態度を示したことから軍に目をつけられる身となってしまう。 その頃バクテリア国がトメニアの隣国オストリッチに攻め込もうとしているという情報が入り、ヒンケルはバクテリア国の独裁者ナポローニと会見を持つ事になる。 そんな事情は知らない床屋と床屋の大家はユダヤ人が迫害されるトメニアを逃れオストリッチに向かった。 しかし、シュルツをかくまった床屋はトメニア軍に逮捕されてしまう。やがてシュルツと共に脱走した床屋は将校の服を着て逃げたので、ヒンケルと間違えられてしまう ・・・

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チャップリンの初めてのトーキー映画。 風船状の地球儀と戯れるシーンはしなやかなバレエのような動きの美しさでヒンケルの狂気と独裁者の孤独が表現されていてその高い芸術性に何回観てもぞくぞくする。また、クラシック音楽に併せて客の髭を剃るシーンはサイレント時代のパントマイムの王者の風格が見事。 ラストの演説シーンはちょっと唐突といえないことも無いが、韻をふんだ美しい演説で且つ平和を訴える内容も素晴らしい。 ファシズムや共産主義を否定し民主主義こそが完璧で民に平和をもたらすと言っているが、この演説で批判しているのはヒットラーやムッソリーニだけではなく米国の権力者も含まれているのではないだろうか。 つまり、この演説シーンの意図は、プロパガンダとしてではなくて、人間として平和を求めるメッセージなのだと理解すると映画全体からの流れとスムースに繋がる。

アドルフ・ヒットラーは演説が上手で群集を魅了したといわれるが、ヒンケルの演説はドイツ料理の名前や片言ドイツ語を適当に交えたインチキ・トメニア語(ドイツ語)が散りばめられていながらそれなりに聞こえて可笑しい。 映画全体のテーマは反戦であり反暴力であるが、随所にユーモアや温かさがちりばめられていてチャップリンならではの上質なコメディー仕立てとなっている。

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主な出演者:
  Charles Chaplin … Adenoid Hynkel, Dictator of Tomania/A Jewish Barber
  Jack Oakie … Napaloni, Dictator of Bacteria
  Reginald Gardiner … Schultz
  Henry Daniell … Garbitsch
  Paulette Goddard … Hannah


dir: Charles Chaplin

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